X JapanのYoshiki、音楽関係者のメンタルヘルス支援で米慈善団体と協力
米疾病対策センター(CDC)によると、うつ病や不安症に悩む米国の成人の割合は2020年8月から今年2月の間に、36.4%から41.5%に増加したという。
そうした人たちの中には、問題に対処する方法としてマインドフルネスに目を向ける人や、運動をしたり、日記を書いたりする人たちがいる。ストレスを軽減させるために、音楽に頼る人たちもいる──そしてその中には、音楽を職業とする人たちもいる。
X Japanのリーダー、Yoshikiはもう長い間、メンタルヘルスの問題と向き合ってきた。それは、父親が自殺した10歳のときからのことだ。抱える痛みをいくらかでも和らげよう、あるいは完全に取り除こうと試みてきたが、そのような経験が精神面に与えた影響は、消し去ることができない(そうできることが、理想的ではあるが)。
そしてYoshikiは、その経験を自らの生き方の一部としてきた。音楽業界が扱うのは芸術であり、芸術には痛みから生まれるものも多いと考えている。
コロナ禍が多大な打撃
Yoshiki が創設した非営利団体「Yoshiki Foundation America」が協力するミュージケアーズ(MusiCares、グラミー賞を主催するレコーディング・アカデミーが1989年に創設した慈善団体)が行った調査によると、音楽業界に携わる人の26%が、中等症~重症のうつ病を経験しているという。
また、新型コロナウイルス感染症(Covid-19)のパンデミック発生以降、メンタルヘルスの問題でカウンセリングを必要とした人は、回答者の35%だった。そのうち53.5%は、金銭的な理由でカウンセリングを受けることができなかったという。
経済的な不安があると答えた人は、51%にのぼる。そう答える人が多い理由の一つは、彼らの収入は大半が、ツアーから得られるものであるためだ。だが、そのツアーはパンデミックによって、基本的にはすべてが中止された(ツアーへの参加が全収入に占める割合は、アーティストが75%、舞台スタッフやクルーメンバーがほぼ100%となっている)。
ミュージケアーズのエグゼクティブディレクター、ローラ・セグーラは、「メンタルヘルスに打撃を受けるような困難を経験する可能性があるのは(アーティスト以外のクルーやメイクアップアーティストなどを含め)、音楽業界に関わるすべての人だ」と述べている。この1年は特に、精神面でのサポートとケアの必要性を際立たせたるばかりだったという。
すべての関係者を支援
ミュージシャンであると同時に、うつ病を理解しているYoshikiは、こうした状況の中、音楽関係者への支援にさらに力を入れている。彼は無力さを感じたとき、痛みを自分の内側に向け始めてしまったとき、人を助けることが自分の気持ちを晴らしてくれることを、幼いころに学んだという。
Yoshikiはミュージケアーズが立ち上げた「COVID-19救済基金」に、Yoshiki Foundation Americaを通じて10万ドル(約1100万円)を寄付している。この救済基金はこれまでに、合わせて3万3000人以上の音楽関係者に、総額2500万ドル以上を提供してきた。
また、これまで自殺について表立って語ることがあまりなかったYoshikiだが、今後はミュージケアーズとの協力によって年に一度開催するパネルディスカッションに参加する予定だという。自殺が家族に与える負担についても、話し合いたい考えだとしている。
Yoshikiは幼いころ、母から父は心臓発作で亡くなったと教えられていた。だが、実際に起きたのは、何か別のことではないかと疑っていたという。数年後、親戚同士の話から、父の死に関する真実を知ったという彼は、多くの疑問を抱えて育った。父の自殺は母や弟、そして彼自身に、多大な影響を及ぼしたと明かしている。
Yoshikiは音楽業界に携わるより多くの人が、安心してメンタルヘルスへの支援を求めることができるようになればと願っている。自らが過去の経験について語り、助成金を通じて援へのアクセスを提供するのは、そのためだ。
編集=木内涼子
< オリジナル記事 >
Forbes JAPAN
https://forbesjapan.com/articles/detail/41669/1/1/1